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Mc.OKAZAKIのミリタリーよもやま話 その4

潜水戦艦!? イギリス海軍・M級潜水艦

今回は第1次世界大戦末期に登場したイギリスのM級潜水艦を紹介してみようかと。

キテレツ兵器を多く開発した国と言えば、何と言っても第2次大戦中のドイツ。超重列車砲グスタフ、60cm自走臼砲カール、超重戦車マウス、V1&V2ロケット、リモコン自爆戦車ゴリアテ・・・枚挙に暇がありません。
しかし、第1次大戦末期にイギリスが開発したこのM級潜水艦は、それらと比べても遜色ない“イカレた兵器”です。>誉め言葉

当時の潜水艦の平均的な兵装スペックは、4〜8門の魚雷発射管と10数本の魚雷、それに10〜14cm砲が1,2門。基本的には魚雷を主武器として戦うのですが、たいてい2斉射くらいしてしまうと魚雷が尽きてしまうので、武装を持たない商船などを攻撃する時は、浮上して砲で攻撃するのが主流でした(魚雷がもったいないので)。しかし、軽巡の主砲と同じ14cm砲程度では破壊力が低く、また、当時の潜水艦は速力が遅かったので逃げられてしまう事もしばしば。そこでこの問題を解決するのに、「大口径砲と高速力」を主眼に置いて開発されたのがM級でした。

M級は艦橋の前部に、なんと戦艦並の30cm単装砲を装備。その異様さは写真を見てもらえれば分かると思います。速力も水上で15ノット。ほぼ商船並みの速力を持っていました。しかし、本来15000dクラスの戦艦が装備する主砲を、1600d足らずの潜水艦に装備したのですから、かなり無理な設計となったようです。

1番艦“M1”は第1次大戦に間に合ったものの、その本来の力を発揮する事は一度もなく、休戦期間中にスウェーデンの商船と衝突事故を起こして沈没。
2番艦“M2”はその特徴的な主砲を撤去して、替わりに格納庫を設置。小型水上飛行機を搭載出来るように改装されたものの、飛行機用の格納庫の扉を閉め忘れて潜航して浸水、沈没という非常にマヌケな最期を遂げています。
3番艦“M3”も主砲を撤去し、こちらは替わりに機雷を積んで敷設潜水艦としてそれなりに活躍したそうです。4番艦は完成せず、それ以降このタイプの潜水艦は打ち切られました。

1つの兵器が完成形に向かう途上には、多くの思考錯誤が生まれます。このM級も、潜水艦が現代の“弾道弾装備の原潜”という究極の兵器に到達する間に誕生した、仇花のような存在かもしれませんね。

(2003・3・25)

 

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