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Mc.OKAZAKIのミリタリーよもやま話 その23

「初め半年や1年は暴れてご覧に入れます」

今日は久々に軍ネタ行ってみましょうか。
冒頭の台詞は山本五十六連合艦隊司令長官が、対米戦開戦に関して近衛首相に問われた時に言った言葉として有名です。そしてその後に「・・・しかし、2年3年となっては全く確信は持てません。日米戦争回避に極力御努力を願います」と続けた事も。これは日米の圧倒的な国力の差、資源や燃料問題を鑑みた、山本五十六の正鵠を射た意見であった事は歴史が証明しています。
では山本五十六率いる日本連合艦隊が、最初の1年間でどれくらい“暴れてご覧に入れた”かをちょっと検証してみたいと思います。集計期間は1941年12月8日の真珠湾攻撃から1942年12月7日まで。この間に撃沈された日本軍と連合軍の主な艦船を紹介して行ってみたいと思います。

まずは空母。連合軍で撃沈されたのは5隻。『ハーミーズ』(英国・13200d・搭載機20機)、『レキシントン』(米国・43400d・搭載機90機)、『ヨークタウン』(米国・25500d・搭載機90機)、『ワスプ』(米国・19150d・搭載機80機)、『ホーネット』(米国・25500d・搭載機90機)。
小型の『ハーミーズ』を除いても、艦隊型主力空母を4隻も撃沈しています。更に1942年12月7日の状態だと、『エンタープライズ』が唯一健在なれど、『サラトガ』が潜水艦の雷撃で損傷し戦列を離れており、太平洋戦線には1隻しか正規空母が存在しないという危機的状況にまで追い込まれています。

一方日本軍は6隻の空母を喪失しています。『祥鳳』(13100d・搭載機27機)、『赤城』(41300d・搭載機66機)、『加賀』(42500d・搭載機72機)、『蒼龍』(18800d・搭載機57機)、『飛龍』(20165d・搭載機57機)、『龍驤』(12732d・搭載機36機)。
やはりミッドウェイで『赤城』『加賀』『蒼龍』『飛龍』を一挙に撃沈されたのが痛過ぎですね。ソロモン海の戦いでは、空母の損失だけを見れば日本軍の方が優位と言えなくも無いですが、実質搭載機の殆ど全てを失っており、その再建に大変な時間と労力を費やす事となります。
ちなみに1942年12月7日現在の日本空母部隊は、正規空母では『瑞鶴』のみが健在で、『翔鶴』は南太平洋海戦での損傷復旧中。しかも艦載機が殆ど無い状態ではどうする事も出来ないですね・・・。

続いて戦艦。ここはもう圧倒的と言って良い程日本軍の戦果が目立ちます。連合軍で撃沈されたのは7隻(真珠湾で着底した艦も含めます)。『アリゾナ』(米国・32440d・36cm砲12門)、『オクラホマ』(米国・28400d・36cm砲10門)、『ネヴァダ』(米国・28400d・36cm砲10門)、『カリフォルニア』(米国・36455d・36cm砲12門)、『ウェストヴァージニア』(米国・32400d・40cm砲8門)、『レパルス』(英国・38200d・38cm砲6門)、『プリンス・オブ・ウェールズ』(英国・44650d・38cm砲10門)。
『ネヴァダ』『カリフォルニア』『ウェストヴァージニア』は引き揚げられて改装され、新型戦艦として大戦末期に再就役しますが、まぁ撃沈は撃沈ってことでw
ちなみに7隻全てが航空機の攻撃で撃沈されています。

一方日本軍の戦艦の喪失は2隻のみ。『比叡』(37000d、36cm砲8門)、『霧島』(36700d、36cm砲8門)。いずれも旧式の『金剛』級戦艦でありながら、日本の戦艦では最も高速を発揮するタイプで、空母機動部隊にも随伴出来る貴重な戦艦でした。
興味深い事にこの2隻、いずれも敵艦との撃ち合いが致命傷となって沈没しています。連合軍の戦艦は全て航空機による喪失である事を考えると、かなり意外な感じがしますね。

写真は省きますが、巡洋艦の喪失も
日本軍:重巡4隻(『三隈』『加古』『古鷹』『衣笠』)
     軽巡1隻(『由良』)
連合軍:重巡9隻(『ヒューストン』『クインシー』『アストリア』『ヴィンセンス』『ノーザンプトン』(以上米)『エクゼター』『ドーセットシャー』『コーンウォール』(以上英)『キャンベラ』(豪))
     軽巡6隻(『マーブルヘッド』『アトランタ』『ジュノー』(以上米)『ジャワ』『デ・ロイテル』(以上蘭)『パース』(豪))
と、日本軍が圧倒的に有利なのが分かります。まさに山本五十六は有言実行、最初の1年間はミッドウェイの失点を除けば本当に大暴れしたと言えるでしょう。
しかし彼の恐れた2年後・3年後の米国の底力を見る事無く、1943年4月に山本五十六は戦死してしまいます。その後圧倒的な戦力差の前に成す統べなく壊滅して行く連合艦隊を見ずに済んだ事は、彼にとって幸福だったのでしょうか、不幸だったのでしょうか。

(2007・6・14)

 

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