2008/01/16 (水)
世界で最も精鋭なる軍隊
今日は久々に軍ネタを。それも自分の専門から少し離れますが現代戦の話で。 世界最強の軍隊と言えばどこを思い起こすでしょうか?まぁ殆どの人がアメリカ軍を挙げるんじゃないでしょうか。確かに軍隊の規模・兵器の質・軍事予算・調練設備、どれを取っても世界一なのは疑いようもありません。しかし、「実戦慣れした少数精鋭の軍隊」という点に於いて、アメリカも一歩を譲る国があります。それが今回の主役であるイスラエル軍です。
何しろ周囲の国の殆どに敵愾心を抱かれ、建国以来何度も侵攻を受けて来ただけあって、この国の軍隊は国を守る意識からして違います。兵器の質という点に於いては1・5流〜2流レベルなのですが、その万全とは言い難い兵器をもって、押し寄せてくるアラブ諸国連合の軍勢を幾度も蹴散らしています。特に1967年の第三次中東戦争(六日戦争)ではエジプト&シリア連合軍を完膚なきまでに叩き伏せ、かえってその大勝が相手の敵意を強め、自らの油断を呼び込む事になったのです。
こうして、当時のイスラエル首相ゴルダ・メイア女史が「死ぬまで忘れられない恐ろしい悪夢」と後に述懐する第四次中東戦争が勃発します。
1973年10月6日、イスラム教の贖罪日(1年の罪を償うために断食と祈りを捧げる日)に当たるこの日、イスラエル軍は警戒を緩めていました。まさにその間隙を縫って、アラブ諸国連合軍が大挙侵攻を開始したのです。
(写真は当時のエジプト軍の主力・MiG−21戦闘機とSu−17戦闘爆撃機) まずはエジプトとシリアの空軍機220機による奇襲爆撃によって戦闘が開始されます。この先制攻撃でイスラエル軍は対空ミサイル陣地・指揮統制施設の殆どを失い、航空基地も甚大な損害を被ります。また、イラクも1個飛行隊を派遣してエジプト軍を支援し、リビアとアルジェリアもエジプトに自軍の戦闘機を貸与するなど、まさに今度こそイスラエルの息の根を止めるべく、アラブ諸国が総力を結集した形となりました。 エジプトとの国境からはアラブ諸国連合軍の火砲2,000門が一斉に火を噴き、スエズ運河には浮き橋が掛けられて70,000人のエジプト軍と400両の戦車が攻め寄せました。これにイスラエルの防衛線は難なく突破され、シナイ半島への進入を許します。更に、戦略上の要所であるゴラン高原からはシリア軍が侵攻を開始します。こうしてイスラエルは建国以来、国家滅亡の最大の危機を迎えるのです。
(写真は当時のイスラエル軍の主力・F−4ファントムU戦闘爆撃機とA−4スカイホーク爆撃機) それでもイスラエル軍はすぐさま反撃に転じます。進撃中の敵地上軍と後方の基地に空軍を向かわせたのですが、ここでイスラエル空軍は思わぬ大打撃を受けます。第三次中東戦争でイスラエル空軍の実力を嫌と言うほど味わったアラブ諸国連合軍は、大規模な対空迎撃ミサイル網を敷いていたのです。固定陣地からはソ連製のSA−2ガイドラインやSA−3ゴア対空ミサイルが、それに移動式発射台に装備されたSA−6ゲインフルがミサイルの雨を降らせたのです。更に低空にはZSU−23−4シルカ対空自走砲が待ち構え、歩兵はSA−7グレイル携帯対空ミサイルを装備し、イスラエル空軍を待ち構えていました。イスラエル空軍は稼動375機のうち、この攻撃で81機を失います。
(写真はZSU−23−4シルカ対空自走砲とSA−6ゲインフル対空ミサイル) しかしここからがイスラエル空軍のとんでもない実力発揮の場となります。残された294機の機体で310機のエジプト軍機と420機のシリア軍機、それに30機のイラク軍機と戦い、39機を失うものの、エジプト軍機213機とシリア軍機220機を撃墜するのです。損害費1:11。航空戦ではちょっとありえない数字です。 この空軍の大活躍で戦況は大逆転。制空権を失ったアラブ諸国連合軍は進撃が頓挫。逆にイスラエル軍がシリアの首都ダマスカスの直前まで進軍するにあたり、10月24日、遂に停戦条約が結ばれたのです。
国家滅亡の危機を救ったのはスーパートップガン集団とも言えるイスラエル空軍の猛者たちですが、この大逆転の影にはアメリカからの大規模な軍需物資支援という要因もありました。このアメリカの動きに怒り狂ったアラブ諸国は、西側諸国に対する石油の禁輸措置を打ち出したのです。これが世に名高い“オイルショック”の原因です。
この戦いの戦訓から、イスラエル空軍はその弱点をすぐに補います。敵レーダーや対空ミサイルからの攻撃から身を守るECM装備、制空能力に優れたF−15Cや、敏捷性に優れた新型のF−16C戦闘機の導入。 最強の精鋭が、戦訓を重ねて更に強くなって行く。最強イスラエル軍伝説は今もまだ続いています。
本日のBGM:砂漠(すな)のイリュージョン(OVA『エリア88』主題歌)
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