2013/12/03 (火)
ヒュウガVSタカオを、ちょっと真面目に検証してみよう!
先週の『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-』で、幾度目かの喧嘩を行ったヒュウガとタカオ。御存知の通り、彼女たちにはモデルになった太平洋戦争中に活躍した艦が実在します。ヒュウガは航空戦艦『日向』(イ401に撃沈された時の形状から、航空戦艦に改装された後の姿である事が確認出来ます)、そしてタカオは重巡洋艦『高雄』。 さて、実際の両艦が喧嘩したらどっちが勝つのか・・・30年来の軍ヲタである私の視点で見てみたいと思います。
まずは航空戦艦『日向』の略歴から。就役は1918年4月で、開戦当時は23歳の女盛り・・・と言いたい所ですが、軍艦としては老齢の類です。 開戦後しばらくは出撃する機会もなかった『日向』ですが、1942年5月、演習中に5番主砲塔を爆発事故で喪失。直後のミッドウェイ海戦で主力空母4隻を失った事もあって、『日向』は僚艦『伊勢』共々後部を大改造して航空戦艦に生まれ変わります。 しかし戦局の悪化もあって実際に艦載機を運用しての作戦参加は実現せず、捷一号作戦(レイテ沖海戦)や北号作戦で活躍するも、最後は燃料が枯渇して呉港沖に停泊中の所を空襲され、大破着底してその生涯を終えました。
続いて重巡洋艦『高雄』。就役は1932年5月で、開戦当時は9歳のょぅι゛ょ・・・と言いたい所ですが、軍艦としては乗員の熟練度も進んで最も脂の乗った時期と言えます。 開戦時はフィリピン攻略部隊に属し、その後は北はアリューシャン列島から南はソロモン海まで、太平洋狭しと八面六臂の活躍。大きな海戦にも数多く参加し、歴戦の艦となります。 しかし捷一号作戦で米潜水艦の魚雷2本を受けてボイラーとスクリューを破壊されて航行不能に陥り、応急処置の後にシンガポールに撤退。その後は本土に帰還する見込みも立たないままシンガポール港に在泊中の所を英軍の小型潜水艇が仕掛けた機雷によって更にダメージを受けて行動不能状態となり、そのまま終戦を迎えます。 『高雄』は英軍に接収された後、1946年10月にマラッカ海峡で海没処分となってその生涯を終えました。
スペック比較
『日向』 『高雄』 排水量 38,872d 13,400d 全長 219.62m 203.76m 全幅 33.83m 20.73m 馬力 80,649馬力 130,000馬力 速力 25.1㌩ 34㌩ 航続距離 9,500㌋/16㌩ 6,500㌋/16㌩ 乗員 1,669名 835名 主砲 35.6cm砲×8門 20.3cm砲×10門 高角砲 12.7cm高角砲×16門 12.7cm高角砲×8門 機銃 25_機銃×57門 25_機銃×8門、13_機銃×4門 雷装 なし 61cm魚雷発射管×16門 搭載機 爆撃機22機 偵察機3機
まぁ戦艦と重巡なので基本スペックは大きな差がありますが・・・。 純粋な砲撃戦ならば圧倒的に『日向』有利。火砲が段違いです。『高雄』の主砲では『日向』の船体基部にダメージを与えるのは難しく、逆に『日向』の主砲弾ならばどこに当たっても『高雄』の装甲を撃ち抜けます。また、射程距離も35.6cm砲と20.3cm砲ではかなりの差があります。 しかし『高雄』には日本海軍の伝家の宝刀・九三式酸素魚雷があります。速度では『日向』を圧倒しているので、主砲によるアウトレンジ攻撃を回避し続け、水雷戦に持ち込めれば一発逆転も可能です。 しかし『日向』には何と言っても艦載機があります。水上爆撃機『瑞雲』と艦上爆撃機『彗星』を計22機搭載出来る『日向』は、この戦力で『高雄』を葬る事も可能です。 やはり両艦のガチンコバトルは艦載機による攻撃→主砲によるアウトレンジ攻撃のコンボで『日向』の方に軍配が上がりそうです。
続いて、大ヒットオンラインゲーム『艦隊これくしょん』に於ける両艦のスペックを見てみたいと思います。
『日向改』 『高雄』(カッコ内が改装後) 耐久 77 45(57) 装甲 75 35(48) 回避 40(36) 35(49) 搭載 44 6(8) 速力 低 高 射程 長 中 火力 63 40(51) 雷装 0 24(30) 対空 45 18(25) 対潜 0 0 索敵 22 13(22) 運 30 10
うん、艦これのデータってよく考えられてると思いますよ。ほぼ実際の艦の数値を当てはめた感じになってます。 つーわけでやはりこの勝負、『日向』>『高雄』って事で宜しいかと思います。でもタカオちゃんには実艦には搭載されていないツンデレ可愛さがありますから!!
最後に、両艦に関する面白いエピソードを幾つか紹介しておこうかと思います。
●『日向』は艦歴が長いだけあって実に35代まで艦長がいる。歴代の艦長の中には、後の連合艦隊司令長官豊田副武や、連合艦隊参謀長の宇垣纏、スリガオ海峡夜戦で『扶桑』『山城』を率いた西村祥治など、錚々たる面子が連なる。最後の35代目艦長・草川淳少将は、呉港沖の空襲で『日向』が着底した際、艦橋への直撃弾で戦死している。 ●先週のアルペジオの感想でも紹介した着底後の『日向』。実は写真の他にも米軍が撮影したカラー映像もある。観たい人はようつべとかで探してみると良いよ! ●『日向』は2度の主砲塔爆発事故と1度の火薬庫火災事故を起こしながら無事だったという、強運と言うか悪運の持ち主と言える。『陸奥』『河内』『三笠』など、火薬庫火災事故で沈んだ戦艦は数知れない。 ●レイテ沖海戦で多くの米軍機を対空火器で葬り、北号作戦では米軍の制空権下で堂々と輸送作戦をこなして無事に本土に物資を持ち帰るなど、大戦末期に痛快な活躍をした『日向』。それだけに呉軍港空襲の時は目の敵にされた感が強く、他の艦艇以上に滅多打ちにされてしまった。南無。 ●戦後に引き揚げられて解体処分となった『日向』ですが、艦内に鉄泥棒が潜り込み、金で出来たバルブを盗もうとして叩き壊したら海水がドッと流れ込んで再び沈没。二度目の着底を経験する事に・・・南無南無。 ●『日向』の航海灯と軍艦旗は、今でも大和ミュージアムで見れるよ! ◯『高雄』は高雄型重巡洋艦の1番艦だが、実は就役したのは2番艦の『愛宕』の方が2ヶ月程早かった。なんちゃって長女である。 ◯構造上の欠陥で、第4主砲塔をぶっ放すと、角度によっては艦載機スペースに爆風が被って偵察機が壊れます・・・。実際壊した事アリ。 ◯ラバウル空襲の際、重油の補給中に攻撃を受けた『高雄』は身動きが取れない状態で2発の命中弾を受け、主砲の炸薬に引火・・・しかし小破程度の損害で済む。運が良いのか悪いのか。 ◯父島沖で護衛空母『雲鷹』が被雷と悪天候で艦首を切断した際は、この危機に駆逐艦4隻を率いて駆け付けて、『雲鷹』を曳航して無事に横須賀に連れ戻しただけでなく、米潜水艦1隻を撃沈した。高雄△! ◯行動不能状態でシンガポール港に在泊時、B-29の空襲を受けた『高雄』は主砲と高角砲で応戦し、見事B-29を1機撃墜している。またまた高雄△! ◯でもマリアナ沖海戦では味方の航空隊を敵機と間違って誤射。数機を撃墜してしまっている。高雄ェ・・・ ◯戦後、マラッカ海峡で海没処分となった『高雄』を砲撃で沈めた英巡洋艦『ニューファンドランド』は、その後ペルー海軍に売却され、最終的には日本で解体された。
本日のBGM:AVENGE WORLD(『フリージング ヴァイブレーション』OP)
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